本当に買うの?

シンガーソングライター、俳優の福山雅治さんが、2021年6月に引退したJR九州のキハ66・67形について「買って展示できるなら自腹で車両代、土地代を出すよ」とラジオで発言。ただ合わせて、もっともな「ある条件」も出しています。

俺にとっては「ベージュと朱色のキハ」こそが…

シンガーソングライター、俳優の福山雅治さんが、「本物の汽車」を購入するかもしれません。

2021年7月17日(土)の「福山雅治荘口彰久の『地底人ラジオ』」へ、リスナーから次のようなメッセージが寄せられました。

「大変です! 福山さんが大好きな車両がまたひとつ姿を消すようです。長崎地区で走っている(JR九州の)キハ66・67形が6月30日で引退。長崎市民にはなじみがありすぎるあのブルーの車両と、みかん色とベージュっぽいツートンカラーの、あの車両のようです。福山少年にとって思い出の車両をぜひ買い取って、将来、長崎にできるであろう福山雅治ミュージアムに展示をお願いします!」

長崎出身の福山さんは、次のように答えます。

子どものころ、キハ66・67で行ってたんだよずーっと、ばーちゃんち。『青』はかなり後から登場してきたよ。俺にとっては『ベージュと朱色のキハ』こそが、『弓なりに続く線路』(福山さんの歌『道標』に登場するフレーズ)を走っていた汽車なんですよ」

福山さんによると、長崎で「電車」というと路面電車のことで、「汽車」というと、蒸気機関車ではなく、国鉄・JRの列車を指すようです(一応、鉄道的に厳密に言うと、キハ66・67形は「電車」でも「汽車」でもなく「気動車ディーゼルカー〉」)。

そして福山さんは続けて「買えるの? 買って置いておくところがあって、長崎の有志たちがちゃんとお手入れ、維持できたら、車両の購入と土地代は僕、やりますけど。(鉄道車両の保存活動でもよく行われるクラウドファンディングではなく)自腹でいいですよ」と話しました。

これを受けてSNSではいま、車両の引退を悲しんでいた全国の鉄道ファンも、大盛り上がりです。

実現の可能性は? 車両代はいくら? 過去に例あり

ただこうした鉄道車両の保存では、福山さんが指摘するとおり、「ちゃんと手入れ、維持できるか」というのは大変重要です。

鉄道車両は動かなくなると、特に屋根がない環境では劣化が早いです。たとえば雨が降った場合、走っていれば水が動いて散っていきますが、止まっていると水がたまり、そこから車両の腐食が広がっていきます。

保存が実現に至っても、金銭的また労力的都合から鉄道車両が朽ちていく例は、珍しくはありません(もちろん保存した当事者は、そんなつもりではなかったと思いますが)。

JR九州にとっても、そうした維持管理体制が不明瞭な場合、車両の譲渡は難しいでしょう。体制が整っていない団体や個人に譲渡して何か起きたら、JR九州の責任問題になる可能性もゼロではないでしょうし、なにより長年にわたって九州で活躍してきた車両です。大切にして欲しいはずです。

JR九州に聞いたところ、近年、引退車両の譲渡は(株)日田天領水や熊本県多良木町に対し行ったことがあるそうで、車両のアスベスト除去費用や運搬費などは必要ですが、車両代は無償だったとのこと。

過去に譲渡の例があり、金銭的になんとかなるとしたら、やはり課題は福山さんが言うように「ちゃんと手入れ、維持できるか」です。

逆に言えば、長崎や九州の有志たちによってそこがクリアできるなら、実現の可能性は結構高いと思います。

乗ったことある人 長崎県民以外でも結構多いかも?

キハ66・67形は、1975(昭和50)年のデビュー当時としては高性能な車両で、画一的だった当時の国鉄車両のなかで九州の地域性を考えて造られたことなどから、鉄道友の会の第16回「ローレル賞」を受賞。日本の鉄道史的にも、一定の価値がある車両と言えます。

またキハ66・67形は、大村線の快速「シーサイドライナー」などとして、長崎と佐世保という長崎県の2大都市をハウステンボス駅経由で結びました。旅行者も多く運んだことでしょう。

長崎の人たちとJR九州、そして福山雅治さんが連携し、この車両が保存されたら、喜ぶ人は長崎県内そして県外にも、少なくないかもしれません。

最後に蛇足ながら付け加えておきますが、福山さんの思い出にある「ベージュと朱色のキハ」は、キハ66・67形ではなく、その前に走っていたキハ58系などの可能性もあります。ただ鉄道ファンでなければ、似たようなものです。

引退したベージュと朱色のキハ66・67形(恵 知仁撮影)。


(出典 news.nicovideo.jp)